匠です
最近のインドでインフレ指標が加速しています。
株式市場にとってインフレはやっかいな悪材料となりますが、その本質や数値の見方を正しく理解するのは結構困難なことですので少し解説してみたいと思います。
まずは、最近のニュースから
2008年05月26日(月曜日)
インドインフレ率、季節調整後は4月から下落基調
『ビジネス・スタンダード』が26日伝えたところによると、国際通貨基金(IMF)インド支部はこのほど、月間インフレ指標を季節調整すると4月にはすでに下落基調に転じているとの見方を明らかにした。
また、週単位での季節調整値を出したところインフレ率は4.7%となり、インド準備銀行(中央銀行)の目標値5.5%の範囲内に収まったという。
-株式会社フィスコ
2008年05月27日(火曜日)
インドインフレ率、改定値は10%も=エコノミスト誌
インド商工省が23日発表した5月10日までの1週間の卸売物価指数(WPI)上昇率は年率換算で7.82%(暫定値)となったが、英誌『エコノミスト』は商品価格が上方修正される見通しから、この数値が10%に達する可能性があると指摘した。
同誌はインド国内のインフレデータ収集に遅れが生じており、これが物価上昇率の大幅な上方修正につながる可能性があると指摘。
-株式会社フィスコ
2008年06月02日(月曜日)
インドインフレ率、数ヶ月で下落基調に
英『エコノミスト』誌の調査部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)はこのほど、国内インフレ率が向こう数週間内に下落基調に転じ、9-10月頃には適正水準に落ち着くとの見方を明らかにした。
EIUリサーチ部門のボーラ主任によると、インドの卸売物価指数(WPI)上昇率は現在の8%台から数週間で6-6.5%のレベルで安定するという。モンスーン(季節風)の到来と時期を合わせて農業部門で物価の下落基調が始まるとの見方が背景。
また、『フィナンシャル・エクスプレス』が1日伝えたところによると、HSBCインド法人の幹部も、モンスーンに加えて政府の金融・財政措置が効果を表すため、インフレ率は短期間で落ち着きを取り戻すとみている。
Inflation to come down in three to four months: The Economic Times http://economictimes.indiatimes.com/News/Economy/Indicators/Inflation_to_come_down_in_three_to_four_months_Economists/articleshow/3090133.cms
2008年06月04日(水曜日)
インドのインフレ率、13年ぶりに9%を超える可能性
HDFC銀行チーフエコノミストのアベーク・バルア氏は、ガソリンと軽油の価格が4日、急騰したのを受けて、「近いうちに、現在8.1%のインフレ率が13年ぶりに9%を超える可能性がある」と語った。
インフレ率が9%を超えたのは、13年近く前の1995年9月のことである。
石油次官のM.S.スリニバサン氏は「燃料価格の値上げは、0.5-0.6%のインフレ率の上昇につながる可能性がある。ガソリン価格が11%、軽油価格が 8.5 %値上がりしたことにより、インフレ率が約0.3%上昇するのに加え、液化石油ガスの値上がりで、さらに0.2-0.3%上昇する」と語った。
また、ガソリン価格の上昇による輸送費の増加のため、時間が経つにつれて日用品へとカスケード効果(雪だるま式の影響)が出始め、その結果、インフレ率の上昇圧力がさらに高まる可能性がある。
格付会社クリシルの主席エコノミストのD.K.ジョシ氏は「今後、石油価格の上昇がインフレデータに反映された時(週)に、総合インフレ率は間違いなく9%を超えるだろう」と語った。
インド新聞
http://indonews.jp/2008/06/139.html
これらの記事を読むと、インドでインフレは今後ひどくなるという意見と、いやインフレは沈静に向かうという意見が混在しています。
いったいこれはどういうことなのでしょうか?
理由のひとつに指標や政策などのタイムラグが挙げられます。
インドにおいてインフレを指し示す指標は多くの場合、卸売物価指数(WPI)が使用されます。
他国では消費者物価指数をインフレの指標として重視しているケースが多く見られますが、インドでは使用品目が多く発表頻度(週1)も高い卸売物価指数(WPI)の方が使い易いからです。(消費者物価指数は月1)
この卸売物価指数(WPI)は2週間前の調査値を発表しています。
つまり、明日6月5日発表される卸売物価指数(WPI)は5月22日時点のインフレ率になります。
現在、原油価格が反落していること、そして政府の様々なインフレ対策効果、モンスーンの到来による農作物の収穫・供給などはインフレ沈静化に寄与するでしょうが、石油卸売り価格引き上げはインフレ昂進に繋がります。
これらの作用がまるで波を重ねるように影響を及ぼすため、将来のインフレ率を見通すことは難しいのだと思います。
ただし、インドにおいては食料自給率が100%を超す輸出国であり、鉱物資源も豊富、主なネックは70%を輸入に頼る原油です。
現在、市場で取引されている原油価格は投機的な資金により、底上げされているという声は数多くあります。
それが事実で、近い将来その部分が剥落して原油価格が下がれば、インドのインフレ沈静化に大きく寄与するものと思われます。
以上、原材料価格を中心にお話しいたしましたが、インドのインフレにはもうひとつ大きな要因があります。
“インフラの不足”です。
道路・港湾・鉄道・空港・電力・水道などなど、整備不足の為に、余計な流通コスト等がかかり、物価を押し上げる要因となっています。
現在、様々な場所でこのインドのインフラ整備が進んでいます。
インド初の海上高速道路、工事の78%が完了-インドチャネル
http://news.indochannel.jp/news/nws0000619.html
デリー・メトロ2期工事、一部トンネルが貫通-インドチャネル
http://news.indochannel.jp/news/nws0000627.html
これらの、インフラ整備はインフレ沈静化だけでなく、雇用の拡大、経済成長に大きく寄与します。
そして現在も様々な分野で大型のインフラ整備計画が進行中です。
インド株式については、インフレ懸念によりボラタイルな展開となっていますが、昨日6月4日SENSEX指数終値15514.79はPER17.92倍、本年予想では15.69倍、翌年予想では12.80倍(ブルームバーグより)であり、割高感は感じられません。
株価は言うまでもなくマーケットの需給により決まりますが、その株価=企業価値でない時も多く存在すると考えられます。
その株がファンダメンタルズの変化によって売られているのか、それとも別の要因で売られているのか注意深く判断することが求められているのではないかと思います。
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