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2008年2月27日 (水)

ウォール街のマルチフラクタルウォーカー

1990年代以降コンピュータの発達もあり、株式市場の動向を数学的に裏付ける作業が進み、
その結果、株式市場の動向がランダムな正規分布に基づくという古典的な仮説には誤りがあるらしいとの疑いが持たれるようになりました。

現実のデータから、株価の大きな変動(暴落)は正規分布の予測よりもはるかに頻度が高いということです。

具体的には1987年10月19日、1日に22.6%も株価が下落したブラックマンデーは正規分布によれば、5標準偏差、5億年以上で1度起こる確率なのだそうです。

これらの研究のさ中、1999年2月、Scientific American Magazineにある論文が掲載されました。

『A Multifractal Walk down Wall Street(ウォール街のマルチフラクタルウォーカー)』
http://www.elliottwave.com/education/SciAmerican/Mandelbrot_Article2.htm

タイトルからしてバートン・マルキール博士に喧嘩を売ってます…

作者はベノワ・マンデルブロ、数学者でエール大学の名誉教授、フラクタルの父と呼ばれる複雑系研究の大御所です。

この論文でマンデルブロ教授は、古典的な金融モデルの欠点を指摘し、数学的な現代ポートフォリオ理論は現実を無視していると説いています。

“現代ポートフォリオ理論は、それをあまりに強く信じる人々や理論家の挑戦に対し、危険を引き起こす”
(Modern portfolio theory poses a danger to those who believe in it too strongly and is a powerful challenge for the theoretician.)

現在、日本でも1500兆円という個人金融資産が資産運用を意識し始めたと言われ、本屋には様々な投資本が並んでいます。

匠は、「あほな僕でも●億円儲かった!」などという、タイトルだけで読む価値の無いことがわかる素人本の著者だけでなく、投資知識(ファイナンシャル・リテラシー)があると思われる経済評論家・エコノミスト・ファイナンシャル・プランナーでさえ、マンデルブロの言う“危険”に気付いていないような気がしてなりません。

そして、この“危険”の裏側に、ほとんど誰も知らない“収益チャンス”が眠っていると匠は考えています。

それを理解するためのキーワードが『複雑系』なのです。

この後、その『複雑系証券投資論』について説明しようと考えているわけですが、その前に、もう1つの重要な概念である『ナイトの不確実性』について話しておきたいと思います。

>>続く

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2008年2月20日 (水)

確率論的事象

王道である古典派証券投資論では、株価の動きは予測できないと考えています。
しかし、それは全く何もわからないということとは違います。

彼らは、株価の動きはランダムと言っています。

この“ランダム”という言葉、日本語に直すと、“でたらめな”とか“無作為な”という意味ですが、古典派証券投資論でいう“ランダム”は物理学では“ブラウン運動”数学的には“ウィーナー過程”と言います。

詳しい説明は省きますが、簡単に言うと、変化量が正規分布(ベルカーブ)に従うという性質を持っていると考えています。

彼らは、株価をトレンド(方向性)にプラスして日々正規分布に基づいた揺れ(ウィーナー過程)とその株に特有なボラティリティ(変動の大きさ)変動していくと理論付けています。

数式にすると、以下のような(不変揺動)確率微分方程式で表されます。

dx(t)=b(t)dt+sdw(t)
dx(t):株価の時間増分
b(t)dt:ドリフト項(トレンド)の時間増分
s:ボラティリティ(標準偏差)
dw(t):ウィーナー過程増分

この方程式はオプション理論のブラック=ショールズ公式など金融数学の基礎となる方程式です。

わかりやすくするために、具体例をもって考えてみましょう。

例1)
200X年大発会の日経平均は15000円でした。
企業業績は年間10%アップするとしてマーケットはその率10%をトレンドとして織り込むとする。
ボラティリティ(標準偏差)は過去のデータから30%と考える。
この時、200X年大納会の日経平均は?

解)
日経平均の時間増分dx(t)は
dx(t)=15000×10%+15000×30%×dw(t)
=1500+4500 dw(t)

200X年大納会の日経平均は15000円+dx(t)

=16500+4500 dw(t)

どういうことか図を描くと

Normal1

                 (図2 標準正規分布)

一番可能性が高いのは16500円近辺、そして標準正規分布の性質上±1標準偏差
12000円(16500-4500)から21000円(16500+4500)
の間である可能性が約68%。

逆に言えば、12000円以下になる確率、21000円以上になる確率とも約16%((1-68%)/2=16%)ということがわかります。

このように、古典派証券投資論では、株価の動きは予測できないと言えども、どの範囲内にどのぐらいの確率で収まるということは予想できるわけです。

そして、この古典派証券投資論には統計学の大定理

『大数の法則』

という味方がいます。
大数の法則とは、ある試行を何回も行えば、確率は一定値に近づくという法則です。
長期投資効果の理論的背景で、大雑把に言えば、投資を1年間でなくもっと長期に見れば平均に近づくということです。

上記の考え方を元に、投資戦略を考えようとすると…

長期・分散投資・インデックスファンド・ドルコスト平均法に行き着くことは当然です。

プリンストン大学教授でインデックスファンドの生みの親であるバートン・マルキール博士が著したベストセラー、「ウォール街のランダム・ウォーカー」(A Random Walk Down Wall Street)
そのサブタイトルにある“株式投資の不滅の真理”というわけです。

しかし、この本約40年前に書かれた本です。
この古典派証券投資論、本当に“株式投資の不滅の真理”なのでしょうか?

>>続く

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2008年2月15日 (金)

“できること”と“できないこと”

匠はプロである条件を次のように考えています。

『“できること”と“できないこと”の区別が明確であること』

これは資産運用アドバイスを行うアドバイザーについても言えることだと思っています。

特に資産価格の予想については

『“わかること”と“わからないこと”の区別が重要です。』

よく、株の動きはわからないと言いますが、何がわからないのかよく考えなければなりません。

ここで日本の経済が比較的安定している時、以下4つの価格について1年後の価格(数値)を予想してみて下さい。

     額面100万円、1年後満期になった時の国債の価格

     5年連続50円配当している安定企業の1年後の配当

     5年連続純利益が10%成長している成長企業の1年後の純利益(今年100億円)

     ③の企業の1年後の株価(現在1000円)

さて、皆さんはどうお考えになるでしょうか?

①②③④の順に予想が難しくなると思わないでしょうか?

特に③から④へのステップは、どういったアプローチで検討すべきか悩むところです。

このアプローチを検討する上で、匠は資産価格を、③に基づくその本源的価値(Fundamentals Value)と④に相当する市場価格(Market Price)とに分けて考えるべきだと思っています。

本源的価値(Fundamentals Value)とは何か?

株式(企業)の場合

本源的価値=将来の純利益/割引率の合計

概ね、DCFDiscount Cash Flow)法に沿ってイメージしています。

DCFDiscount Cash Flow)法については以下フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』をご参照ください

http://ja.wikipedia.org/wiki/DCF%E6%B3%95

ここで、計算と言わず、イメージとしたのは、DCFDiscount Cash Flow)法の弱点である将来収益予想・割引率算定の困難さを、具体的な数値ではなく、大まかなレベルと方向性(ベクトル・増え方)で克服しようとしているからです。

本源的価値と市場価格は常にイコールでないことは言うまでもありませんが、本源的価値は市場価格形成の有力な根拠として存在するということについても異論を唱える人は少ないと思います。

本源的価値を無視して過剰に評価された市場価格はいずれ“バブル”という名をもって崩壊し、オーバーシュートした市場価格は、やがて本源的価値を模索しながら妥当な価格へ収束しようとする力が働きます。

Fmvalue

         (図1 本源的価値と市場価格)

匠はDCF法などから、株式の本源的価値が、現在どの程度のレベルにあるか、そしてその価値は今後増加する方向にあるのかどうかをイメージした上で、現在の市場価格の妥当性を検証しています。

>>続く

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2008年2月14日 (木)

匠’s証券投資論

匠です。

最近、お客様からインド株式の急落について様々な意見を聞きます。

その中でかなり多い意見が

「高い所で一度売って、安い所で買い直すべきだった」

という意見です。

しかし、匠としては、この考えに賛同できません。

なぜなら、この方法は

「地震が来る前に一度避難して、地震が収まったら戻れば良い」

というのと同じことだと思うからです。

現在の科学において両方とも予測が困難であり、有意に利益を生み出すかどうか疑問です。

匠がお客様に行うアドバイスは、常に様々な理論的背景に基づいたものであり(ただのドタ感のように見えても…)、“当たった”とか“外れた”とかの博打的観念ではないということを申し上げた上で、匠が考える証券投資論を少しずつ書き綴っていきたいと思います。

少し長いものになると思いますが、ご興味のある方はお付き合いいただければ幸いです。

まず、始めにお話しておきたいのは、匠の考える証券投資論は限りなく実践的であり、それゆえ、現在、資産運用を行う上で王道と考えられている古典派経済学による証券投資論とは、根本的な部分で考え方が異なるということです。

古典派経済学による証券投資論とは『ウォール街のランダム・ウォーカー』の著者バートン・マルキール博士、『敗者のゲーム』の著者チャールズ・エリス氏を中心とした学派で、株価(資産価格)はランダムに変化し、予測は不可能という立場にあります。

王道の証券投資論:株価(資産価格)はランダムに変化し、予測は不可能

そして、匠の考える証券投資論は

匠の証券投資論:株価(資産価格)は複雑系というシステムで規定され、予測が可能な部分を有する

ということです。

結果として長期・分散投資(現代ポートフォリオ理論)・インデックスファンド・ドルコスト平均法など、メディアで紹介される単純な資産運用の方法論とは違うアプローチに基づいてお客様へのアドバイスを行っています。

匠は、資産価格の変動がどのような性質を持っているのか、どう理解すれば良いのか、経済学だけでなく、数学、物理学、生物学、社会学など様々な分野の本を読み漁り、長らく研究してきました。(ブラッシュアップは今後も続きます)

そして、『決定論的事象』『確率論的事象』『ナイトの不確実性』、それらの大部分を包括する『複雑系』という体系で資産価格の振る舞いを理解するのが最も有益と現在は考えています。

明日以降、この体系の説明から匠’s証券投資論を始めて行きたいと思います。

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2008年2月 6日 (水)

損切りは早く、利は伸ばせが何故できないか

匠です。
1週間以上Blogサボっておりました。すいません。

相場が荒れると“ピンチ”と“チャンス”が入り混じり、匠の仕事も急激にヒートアップします。

ところで、こういう時期にぜひ意識しておいてもらいたいことがあります。

それは、

「利益が減ってくると、ものすごく、その利益を確保したいとする欲求が働く」

「損失が増えてくると、その増え方に鈍感になる」
です。

具体的には、100万円儲かっている時に50万円減るのと、100万円損している時に更に50万円損するのでは、同じ50万円の損でも人間が感じる痛みは違うということです。

これは、2002年にノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大学のD. Kahnemann 教授の研究、“行動経済学”の内『プロスペクト理論』と呼ばれるものですが、最近ではこの“行動経済学”を人間の脳の働きから解明しようと、

神経経済学(Neuroeconomics)

という学問に発展してきているようです。

先ほどの例は

神経経済学:プロスペクト理論と前頭内側陰性電位
http://waseda-sport.jp/sotsuron/PDF/1K03A234-8.pdf

を元にしたものですが、冷静かつ合理的な判断以前に、株価急落で脳はこのような信号を発信しているんだなと少しでも意識することが重要です。

匠は多くの投資家に接してきましたが、この脳の働きは相当強敵です。

匠は儲かる為には損切りを早く、利を伸ばすように勧めます。

しかし、お客様の脳はそのアドバイスを、ものすごく不愉快と受け取るのです。

匠は以前より指摘していますが、良い人と思える証券マンのアドバイスで儲かることは困難だと感じています。

「これは利益を確保しておきましょう、これは損が出ているので置いときましょう。な~に、また戻りますよ!」

これはお客様が最も受け入れやすい提案ですが、この結末は

『帳簿上は小幅利益のオンパレード、保有株は全て大幅値下がりで塩漬け』

となりがちです。

不愉快かも知れませんが、嫌がらずに、匠のアドバイスにも耳を傾けてくださいね!

※現在、匠’s証券投資論をブログにアップできるよう準備中です。来週にはアップしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

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