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2008年3月31日 (月)

パットとティーショットの違い

匠です。

なぜ、同じ株式でありながら、その後のリターン分布が正規分布であるという主張に違和感を感じるのでしょうか?

匠はひとつの解釈として、株式投資における静的な力である「バリュエーション(株式の本質的価値:利益や資産などから計られる価値)への回帰」は、その投資リターンを正規分布に導くが、別の次元の力が作用した時、その投資リターンの分布は様々な形に歪むのではないかと考えています。

言葉ではイメージしづらいので、愛好家の多いゴルフを例にとって説明しましょう。

まず、グリーン上が全くの平面で芝の目も素直なものであった時にパッティングを行った場合、カップを中心に頻度が高く、左右に離れるほど頻度が低くなります。

Pat

        図4.パッティングの分布(複雑系と相場p.8より)

しかし、仮にPar3、220yのコースで、ティーショットをドライバーで真っ直ぐに打った場合、そのボールの分布はパッティングとは異なり、左右に頻度が高い双頭分布となります。

Tie_1

        図5.ドライバーショットの分布(複雑系と相場p.10より)

これはボールを強く叩くことにより、力の一部がスピンに変換させられるからです。

真っ直ぐに打つためには、プロであってもまぐれのような確率で正確に中心を捉えなければなりません。
この時、わずかなずれがフックとスライスというスピンを生み、狙った方向から乖離させ、双頭分布を生み出すと考えられます。

匠の解釈としては、株式市場の中でも同じような状況が起きていると考えています。

つまり株式市場のスピンとは

『投資家の他者追随行動』

ではないかと思うのです。

株式市場の中ではバリュエーションの判断によって投資行動を決定している投資家も多いと思われますが、「相場は相場に聞け」という格言があることからも他者(相場)追随型の投資家も少なくないと思われます。

このような株式市場のヒューマンスピンとでも呼ぶべき力が、本来の正規分布を歪ませるのではないか、そう匠は考えています。

双頭分布のようなケースではハイリターンとロー(マイナス)リターンが共存していて、ミドルリターンの可能性が低いという、ギャンブリングな投資環境と考えられます。

このようなリターンの分布がバリュエーションとヒューマンスピンでどう変化するのかについて示唆を与えたのが“魚が一列になって泳ぐこと”や“鳥が群れをなして飛ぶこと”をモデルとして捕らえたドイツの物理学者ウオルフガング・ワイドリッヒであり、1974年『社会的模倣の理論』を出版したアメリカの物理学者アール・コーエンとドン・シャピロであります。

匠は、この『社会的模倣の理論』により、株式市場には投資に相応しい環境とそうでない環境があるのではないか?
一律にランダムウォークと捉える考えは、あまりに巨視的ではないかと考えるようになりました。

明日へ続く>>>

 

参考:複雑系と相場 トニス・ヴァーガ著 新田功・永原裕一訳(白桃書房)

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2008年3月28日 (金)

株式市場と雪崩

古典派証券投資論と複雑系証券投資論の違いを感覚的に捉える為に、以下2つの状態での予想リターン分布について考えてみます。

①出来高が平均的な環境下での大型株A
②ITブームがバブルではないかと言われつつ、ここ6ヶ月で株価が4倍となった小型株B

ランダム・ウォーク・セオリー信望者であるパッシブ投資選好投資家は、基本的に両方とも正規分布と主張すると思いますが、実務的になどというまでもなく②の期待リターンが正規分布というのはちょっと納得しづらいところです。

匠的にいうと、②のケースは自然でも起こりえる『雪崩』などに似ています。
自分達でどんどん価格を積もらせていき、最後これ以上はどう考えても理屈がつかな
いという冷静な立場に戻らされる点、これを臨界点と言います。

このような現象を『自己組織化臨界性』と言います。

このような②のリターン分布は正規分布ではなく「双頭分布」に近い形状になると匠は考えています。

2head

                図3.双頭分布

このような分布を次回はわかりやすくゴルフの例で表現してみましょう。

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2008年3月19日 (水)

いよいよ複雑系の世界へ

それではいよいよ匠’s証券投資論、その本質である『複雑系』の説明に参りましょう。

念のため、お話いたしますが今回の一連のお話については、できるかぎり専門的な部分(数式や条件など)ははしょっています。ですから匠が意図する本質的な原理以外はあまり正確な表現ではないということをご理解のうえご容赦ください。

まず、『複雑系』の定義について少し…

『複雑系』とは簡単に言うと

“システムを構成する要素の振舞いのルールが、全体の文脈によって動的に変化してしまうシステム”(複雑系入門 p.3)

匠的に少し咀嚼して言えば、

“買うから上がる”“上がるから買う”

のように、誰かの買いが相場を押し上げ、その押し上げられた株価を見た投資家の買いを誘発するような、変化が新たな変化を呼びこむようなシステム。

つまり、古典派証券投資論の前提である過去の株価と将来の株価は無関係という概念とは異質なものであり、『複雑系』システムは何か意思を持った生き物と同じような変化を起こすものだと考えるとわかりやすいでしょう。

この『複雑系』も以前古典派証券投資論で述べたのと同様、わかっていることがあります。
それは、
「自己組織的臨界状態」「自己相似性(フラクタル)」「カオスとバタフライ効果」などなどの特徴を有するということです。

(参考)
株式市場のみを考える時は、より狭義の『複雑系』としてサンタフェ研究所のジョン・ホランドが提唱する『複雑適応系(集合的複雑適応系)』のモデルが参考になります。

このモデルは、ある情報を与えられたエージェント(投資家)が自身のスキーマ(内部モデル)において情報を処理、具体的な行動を起こし、その結果をフィードバックして再度スキーマに投入する連続モデルで、エージェントが多数であるモデルです。

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2008年3月 7日 (金)

リスクと不確実性は違う

この項の最初の方で、匠は資産運用アドバイスのプロである条件を

『“できること”と“できないこと”の区別が明確であること』

と述べました。

これは言い方を変えると、

「アドバイザーが資産運用について、何をどこまで理解しているか?」

ということです。

前述したように、株価の動きがランダムであるという理解であるならば、株価がどの時点でいくらになっているかはわからないが、この範囲である確率は●%ということが言えます。

つまり、何も全くわからないということではないということです。

それでは、質問です。

Q.この10年以内に北朝鮮が核ミサイルを発射する確率は?

A.???

この問題、数学の苦手な子供などは
「発射する」か「しない」の二つしかないから、確率は1/2と答えたりしますが、もちろんそうではありません。

確率によって予測できる「危険(リスク)」と、確率的事象ではない「不確実性」とは違うことを初めて提唱したのが20世紀前半に活躍した米国シカゴ学派の経済学者フランク・ナイトです。

典型的なケースが2001年9月11日に起きた「アメリカ同時多発テロ事件」です。

事件が起きた時刻はアメリカで金融取引が始まる前で、多くの金融機関が入居する貿易センタービルで起きた事件ということもあり、その日のアメリカ国内の取引は中止。翌週の17日(月曜日)に再開するまで、取引所や金融機関は修復作業に追われました。

このように、ナイトの不確実性は、現在王道の証券投資論を資産運用の実践に応用する場合、問題となることの1つです。

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