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2008年6月30日 (月)

インフレ世界危機?

匠です。

さて、前週Newsweek日本版の表紙

『インフレ世界危機』…

今更ながら、メディアというのは危機感を煽るのが本当に好きだな~と感じる匠であります。
(まぁ極端な表現をしなければ興味を持ってもらえないという事情もわかりますが…)

変な話、「危機だ!」「危機だ!」「インフレ危機だ~」と叫んで、多くの人間がそれを真に受け

「いかん、今の内に買い溜めしておこう」と思い出したら、短期的な需要急増に商品の供給が追いつかず、物不足になり価格は急騰します。

もし、そうなったらメディアは“我々の記事はこの事態を以前から見通していた”なんていうんでしょうか?

悲しいことではありますが、この手の『狂言インフレ』っていうのは馬鹿になりません。

昔、ある信用金庫が女子高生のたわいない一言“信用金庫は危ないよ”という冗談から取り付け騒ぎが発生しパニックになったことがあるぐらいです。

特に最近、金融面において商品ファンドやETF他、商品先物を組入れたファンズオブファンズが増えてきております。

この状況が商品価格上昇に与える影響は決して小さくないと思われます。

このことに関し、先日6月23日放送のNHKスペシャル「マネーの暴走が止まらない~サブプライムから原油へ~」において、ある年金担当者の発言が非常に興味深いものでした。

“我々が原油等の商品に投資することによってガソリン価格が上がれば我々の顧客である年金受給者は困るであろう”
“しかし、我々が商品に投資しなくても誰かが投資する”
“もし我々が投資しなければ我々の顧客はただ困るだけになってしまう…”

上記の発言から、彼ら機関投資家は自らの商品投資がインフレを促進させ、顧客である国民に不利益を与え、尚且つ他運用資産の株式・債券のパフォーマンスを悪化させる可能性を充分に認識していると思われます。

彼らの立場を考えると、他に選択肢はないのでしょう。
まさに、自らの首を絞めていることに気付きながら、どうしようもないといったところです。

しかし、匠から見れば、彼らは重要なリスクについて言及していません。
それは、商品価格の下落についてです。

確かに、周りの年金も商品投資を取り入れているから…ということはあるでしょう。
年金のキャッシュアウトがインフレ率と相関があることもわかります。

しかし、この構図…最近見た覚えが…

そう、サブプライムローンです。
投資銀行がせっせと組成し、あらゆる金融機関やファンドに撒き散らし、現在の金融危機の原因を作った奴です。

今度は、商品の代表格である原油に関して過去から狼少年的に言われている「ピークオイル説」を声高に叫び、自分たちで買い煽っておきながらインフレの危機だと言い、インフレヘッジに商品先物を組み込んだ金融商品をと言って売りまくる。

6月28日日経新聞“市場の話題”によると、投資銀行は石油会社同様、貯蔵タンクも持っているそうで、まったく恐れ入ります。

現在、米議会は原油先物市場での投機抑制を狙った3本の法案として、投機筋の建玉上限の設定、投資銀行のエネルギー・トレーディングの自己ポジション公開を義務付け、年金基金など大手機関投資家による市場参加禁止などを提案しているようです。

匠には、この状況を利用して、彼ら投資銀行が自らのポジションを年金や個人投資家有する投資信託に押し付けるように思えてなりません。

もし、匠の想像通りになれば、一部の投資銀行は商品ポジションを利食いし、商品価格は下落、政治家は面子を保ち、インフレを止めたと自負するでしょう。

バカを見るのは、インフレ危機などという言葉に踊らされて、金融商品を通じ史上最高値となるような価格で商品を買った人達となるのではないでしょうか。

原油価格には「需給バランス」「地政学リスク」「投機的売買動向」の3つの要素があります。

需給バランスについては、米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)データによると、原油の消費から生産を引いた需給バランスは2007年11月にピークを形成した後、来年3月にはほぼバランスすると見られており、また地政学リスクは常に不確定であるが、過去の中東戦争のようなきな臭いものは見られないと考えます。

個人的にポイントとなるのではないかと思うのが、8月アメリカにやってくる“ハリケーン”の季節です。
このハリケーンによって米国製油所に何かアクシデントがあれば、原油価格は大きく影響を受けると思われます。
それだけに、このあたりの時期を中心に原油を中心とした金融商品の実質的保持者が変わり、価格トレンドも大きく変化すると予想しています。

先の番組で年金運用担当者の彼は、会議で“皆さんグッドニュースです。商品ファンドのパフォーマンスがすごく良かったようです”と笑顔で報告していました。

世界の多くの人々が、原油価格の下落、インフレの緩和で笑顔を見せるようになった時、彼の顔は苦渋に満ちたものになるかも知れません。

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2008年6月27日 (金)

皆様からの質問(インド金融機関について)

匠です。
長い間、ブログをお休みして申し訳ありません。

最近、このような質問をいただきました。

Q.
インドを代表するICICI銀行他各銀行の5Y-CDSスプレッドが300bp以上になっているそうですが、金融破綻の可能性が高いのですか?

それに対する、匠の考えは以下のようなものです。

A.
最近、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる取引が注目を集めています。
これは、企業が破綻した場合の、その企業債券の元本を第三者が保証する保証料を表し、通常、政策金利などリスク・フリー・レートとのスプレッドとして表示されます。

ブルームバーグで調べてみると、確かにICICI銀行の5年債-CDSスプレッドは昨夏までの50~100bp(1bp=0.01%)のボックスを上抜けてから上昇おり、今年3月に350bpまで上昇した後、4月には250bpまで低下、現在は再度331.1bpまで上昇しています(6/26)。

この水準がどの程度か他企業の水準と比較すると、

SBI(インド銀行):225.7(6/26)
Lehman(米国投資銀行):258.2(6/25)
Citigroup(米金融グループ):171.8(6/26)
みずほファイナンシャル:107.3(6/26)
日本航空(JAL):480.0(6/26)

ちなみに、ベアー・スターンズのCDSスプレッド(5年物)は破綻直前で650bpまで上昇し、その当時Lehman(米国投資銀行)の5Y-CDSスプレッドは464.5(3/18)まで上昇いたしました。

ICICI銀行の5Y-CDSスプレッド水準が相対的に高いことは事実ですが、日本の金融機関とのスプレッド差を見ると、今年インド株が下げ基調となる以前は100bp前後であったのが、インド株が下落を始めた今年1月以降200bp前後となっており、その部分で更なる拡大は見られません。

このことから考察すると、私見かつ大雑把ではありますが、現在の300bp強のスプレッドは、

元々の金融機関のスプレッド(50bp程度)

元々のICICI銀行の財務格付け評価BBB-[S&P](100bp程度)

世界的な金融不安と将来のインフレ懸念による世界中の銀行のスプレッド拡大(100bp程度)

インド株価下落の影響(100bp程度)

で説明されると考えられます。

また、ICICI銀行の格付情報をみても、引き下げ方向の情報は見当たりませんし、インドの銀行に対する不信感のようなニュースも目にしておりません。

よって個人的には、現在のICICI銀行他各銀行の5Y-CDSスプレッドからインドの金融破綻の可能性が高いと判断するのはいかがなものかと思います。

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2008年6月 5日 (木)

インドのインフレ懸念について

匠です

最近のインドでインフレ指標が加速しています。
株式市場にとってインフレはやっかいな悪材料となりますが、その本質や数値の見方を正しく理解するのは結構困難なことですので少し解説してみたいと思います。
まずは、最近のニュースから

2008年05月26日(月曜日)

インドインフレ率、季節調整後は4月から下落基調

『ビジネス・スタンダード』が26日伝えたところによると、国際通貨基金(IMF)インド支部はこのほど、月間インフレ指標を季節調整すると4月にはすでに下落基調に転じているとの見方を明らかにした。
また、週単位での季節調整値を出したところインフレ率は4.7%となり、インド準備銀行(中央銀行)の目標値5.5%の範囲内に収まったという。
-株式会社フィスコ

2008年05月27日(火曜日)

インドインフレ率、改定値は10%も=エコノミスト誌

インド商工省が23日発表した5月10日までの1週間の卸売物価指数(WPI)上昇率は年率換算で7.82%(暫定値)となったが、英誌『エコノミスト』は商品価格が上方修正される見通しから、この数値が10%に達する可能性があると指摘した。
同誌はインド国内のインフレデータ収集に遅れが生じており、これが物価上昇率の大幅な上方修正につながる可能性があると指摘。
-株式会社フィスコ

2008年06月02日(月曜日)

インドインフレ率、数ヶ月で下落基調に

英『エコノミスト』誌の調査部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)はこのほど、国内インフレ率が向こう数週間内に下落基調に転じ、9-10月頃には適正水準に落ち着くとの見方を明らかにした。
EIUリサーチ部門のボーラ主任によると、インドの卸売物価指数(WPI)上昇率は現在の8%台から数週間で6-6.5%のレベルで安定するという。モンスーン(季節風)の到来と時期を合わせて農業部門で物価の下落基調が始まるとの見方が背景。

また、『フィナンシャル・エクスプレス』が1日伝えたところによると、HSBCインド法人の幹部も、モンスーンに加えて政府の金融・財政措置が効果を表すため、インフレ率は短期間で落ち着きを取り戻すとみている。

Inflation to come down in three to four months: The Economic Times http://economictimes.indiatimes.com/News/Economy/Indicators/Inflation_to_come_down_in_three_to_four_months_Economists/articleshow/3090133.cms

2008年06月04日(水曜日)

インドのインフレ率、13年ぶりに9%を超える可能性

HDFC銀行チーフエコノミストのアベーク・バルア氏は、ガソリンと軽油の価格が4日、急騰したのを受けて、「近いうちに、現在8.1%のインフレ率が13年ぶりに9%を超える可能性がある」と語った。
インフレ率が9%を超えたのは、13年近く前の1995年9月のことである。
石油次官のM.S.スリニバサン氏は「燃料価格の値上げは、0.5-0.6%のインフレ率の上昇につながる可能性がある。ガソリン価格が11%、軽油価格が 8.5 %値上がりしたことにより、インフレ率が約0.3%上昇するのに加え、液化石油ガスの値上がりで、さらに0.2-0.3%上昇する」と語った。
また、ガソリン価格の上昇による輸送費の増加のため、時間が経つにつれて日用品へとカスケード効果(雪だるま式の影響)が出始め、その結果、インフレ率の上昇圧力がさらに高まる可能性がある。
格付会社クリシルの主席エコノミストのD.K.ジョシ氏は「今後、石油価格の上昇がインフレデータに反映された時(週)に、総合インフレ率は間違いなく9%を超えるだろう」と語った。

インド新聞
http://indonews.jp/2008/06/139.html

これらの記事を読むと、インドでインフレは今後ひどくなるという意見と、いやインフレは沈静に向かうという意見が混在しています。

いったいこれはどういうことなのでしょうか?

理由のひとつに指標や政策などのタイムラグが挙げられます。

インドにおいてインフレを指し示す指標は多くの場合、卸売物価指数(WPI)が使用されます。

他国では消費者物価指数をインフレの指標として重視しているケースが多く見られますが、インドでは使用品目が多く発表頻度(週1)も高い卸売物価指数(WPI)の方が使い易いからです。(消費者物価指数は月1)

この卸売物価指数(WPI)は2週間前の調査値を発表しています。

つまり、明日6月5日発表される卸売物価指数(WPI)は5月22日時点のインフレ率になります。

現在、原油価格が反落していること、そして政府の様々なインフレ対策効果、モンスーンの到来による農作物の収穫・供給などはインフレ沈静化に寄与するでしょうが、石油卸売り価格引き上げはインフレ昂進に繋がります。

これらの作用がまるで波を重ねるように影響を及ぼすため、将来のインフレ率を見通すことは難しいのだと思います。

ただし、インドにおいては食料自給率が100%を超す輸出国であり、鉱物資源も豊富、主なネックは70%を輸入に頼る原油です。

現在、市場で取引されている原油価格は投機的な資金により、底上げされているという声は数多くあります。
それが事実で、近い将来その部分が剥落して原油価格が下がれば、インドのインフレ沈静化に大きく寄与するものと思われます。

以上、原材料価格を中心にお話しいたしましたが、インドのインフレにはもうひとつ大きな要因があります。

“インフラの不足”です。

道路・港湾・鉄道・空港・電力・水道などなど、整備不足の為に、余計な流通コスト等がかかり、物価を押し上げる要因となっています。

現在、様々な場所でこのインドのインフラ整備が進んでいます。

インド初の海上高速道路、工事の78%が完了-インドチャネル
http://news.indochannel.jp/news/nws0000619.html

デリー・メトロ2期工事、一部トンネルが貫通-インドチャネル
http://news.indochannel.jp/news/nws0000627.html

これらの、インフラ整備はインフレ沈静化だけでなく、雇用の拡大、経済成長に大きく寄与します。
そして現在も様々な分野で大型のインフラ整備計画が進行中です。

インド株式については、インフレ懸念によりボラタイルな展開となっていますが、昨日6月4日SENSEX指数終値15514.79はPER17.92倍、本年予想では15.69倍、翌年予想では12.80倍(ブルームバーグより)であり、割高感は感じられません。

株価は言うまでもなくマーケットの需給により決まりますが、その株価=企業価値でない時も多く存在すると考えられます。

その株がファンダメンタルズの変化によって売られているのか、それとも別の要因で売られているのか注意深く判断することが求められているのではないかと思います。

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